不器用ハートにドクターのメス
真っ白な生地に、レースがふんだんにあしらわれたものだ。
普段着用しているシンプルなものと比べて、ずいぶん豪勢でボリュームがある。
店員に勧められるがまま購入したものなのだが、こうして装着してみると、自分にはかなり不釣り合いな下着であるように思えてきてしまった。
しかもその上に羽織るのは、浴衣ときたものだ。
自宅から持ってきたパジャマを着用するつもり満々だった真由美は、薄く、胸元があいている浴衣を、ひどく心もとない衣服のように感じてしまう。
左の襟が上になるように着ればいいんだよね、と何度も目視確認し、髪を乾かし、一生懸命化粧水を叩きこんでから、真由美は脱衣所を後にした。
「……あっ」
そわそわしながらのれんをくぐると、近くに置かれたベンチに、神崎が座って待っているのが見えた。
オペ着に白衣、それから私服は何度も目にしたことはあるが、浴衣姿は初めてだ。
肋骨の内側で、あたたまった心臓が大げさに跳ねる。
「お、お待たせしてすみません……」
「いや、俺もさっきまでゆっくりしてた」
表情をゆるめた神崎は、ベンチから立ち上がり、一歩二歩と、真由美の方へ歩み寄る。
長身であるせいか、神崎は浴衣を、それはそれは見事に着こなしていた。
多少濡れたままの髪と、しっかり血管が浮き上がった太い首からは、男ならではの色気がにじみ出ている。
いけないものを見てしまったかのような気分になり、真由美はあわてて、視線をそらした。