不器用ハートにドクターのメス
「いいな、浴衣」
「……っ、」
そこでさらりと自分の方を褒められてしまい、ぼっと、体の奥が熱くなる。
「お……温泉っ!気持ちよかったですね」
「ああ。あんなに広い湯にゆっくり浸かれること、なかなかないからな」
返ってきた答えに、そろりと顔を上げてみると、愛好を崩した顔が視界を占めた。
真剣なときには人を委縮させる精悍な顔が、惜しげもなく無邪気な笑みに彩られる瞬間を間近に見て、真由美は思わず、胸をときめかせてしまう。
……なんだか夢みたいだ。先生と旅行に来ているなんて。
でも、そんな風に思っているのも、こんなにドキドキしているのも自分だけなのだろうな……と、真由美ははやる心臓を、なんとかおさえようと試みる。
実は神崎が、ほんのりとピンクに染まった真由美のほおに触れたいという衝動を必死でやり過ごしていたことなど、真由美はまったく気づかないのであった。