不器用ハートにドクターのメス
夕食まではまだ時間があったため、真由美たちは下駄を借り、外を探索することにした。
山の上ではあるものの、一帯が温泉街になっているため、土産物屋はわりとたくさん並んでいた。
店頭で売られる、もくもくと湯気を立てる温泉まんじゅうに、手作り豚まんや焼き立てのせんべい。
旅行先ならではの食べ物は、自然と真由美の目を引き、浮足立つような気分を高めていく。
ただ、これらを食べてしまうと美味しい夕食が入らないおそれがあるので、ここはぐっと我慢しなければならないのだが。
「寒いな」
並んで少しばかり歩いたとき、神崎が言った。
上に分厚い羽織を着ているものの、その下は二人とも、旅館で借りた浴衣姿だ。
晴れてはいてもやはり12月。外気の温度は低く、先ほど湯であたたまったはずの体は、末梢からどんどん冷えていく。
「寒いですね」
こくりとうなずき、真由美が同意したところですぐ、神崎が言った。
「……つなぐか」
「えっ」
「手」
今度は同意する前に、ごく自然に、手はつながれていた。
火種が落とされたように、包まれた手の先から、熱がのぼっていく。
街やその他の場所に出かけた際には、真由美は神崎と、一度も手をつないだことがなかった。
つなぎたいなという願望は実はこっそり持っていたのだが、先生は大人だからそういう大っぴらなことはしないのだろうと、早々に諦めていたのだ。
なのに、まさかここで実現するなんて。