不器用ハートにドクターのメス
一緒に泊まるのだから。相手は、大好きな先生なのだから。
今日まで何度も言い聞かせてきたはずの言葉が、今になって、効力を発さなくなっていく。
怖さや不安、緊張が、どんどん膨張してしまう。
視線をいったんテレビに戻し、ふと神崎の方を見ると、ちょうどのタイミングで目が合ってしまった。
「……っ、」
再び、息をのむ。先ほどまではあんなに打ち解けた会話ができていたのに、急に喉に何かが詰まったように、言葉が出なくなる。
絶妙なタイミングで訪れてしまった視線の合致が、沈黙が、鼓動の高鳴りを激しくする。
頬から首筋に、どんどん熱がたまっていく。
「福原――」
「あ、あのっ!」
神崎に声をかけられた瞬間、いろいろとたまらなくなって、真由美はずり這いで後ろに下がった。
「えっと、あの、」としどろもどろになりながら、膝立ち位になる。
「あ……わたし……だ、大浴場に!!おっきいお風呂に、もっかい、行ってこようかなぁ、と――」
いったん休憩をはさんで落ち着こう。落ち着いて考えよう。
そう思い、つま先に力を入れ、動こうとしたその瞬間。
「~わ……っ!」
先ほどまでずっと正座していたからだろう。
うまくバランスが取れずに膝がカクッと折れ、真由美は自身の浴衣を足先にひっかけて、盛大につんのめってしまった。
「い……っ、」
「大丈夫か!?」
畳にドスンと体を打ち付けたところを、駆け寄った神崎が助け起こす。