不器用ハートにドクターのメス
――せんせい。
そう呼ぶ代わりに、ぐっと体をひねって、真由美は振り返っていた。
そのまま、勢いづけたまま……一瞬息を吸い込んで、自分から、神崎にキスをした。
触れるだけの、掠めるようなキス。
けれどそれは、真由美から起こした初めてのキスだった。
神崎は驚いた顔をしたあと、ふっと息を吐くように、その表情を緩める。
「……すげー不意打ちだな」
向き合った状態で真由美に手を伸ばし、そして守るように、指の甲でほおを撫でる。
何度も肌をくすぐるその指は、自分が壊れ物かなにかと勘違いしてしまうほどに、ひどく優しい。
とめどない愛おしさが、込み上げる。
「……先生」
想いが、込み上げる。
この人に、ずっとそばにいてほしい。
そばにいてほしい。そばにいたい。
ずっと、この人のものでいたい。
「わたし……大丈夫です」
真由美はうるんだ目で、神崎を見上げた。
「先生だから、大丈夫です」
この人のものになりたい。
決意を込めた、本心だった。
見つめる先で、神崎が息を飲み、目を見開く。
先生の魅力は、毒だ。くちびるを結んで、そんな風に、真由美は思う。
見るだけで、心臓は簡単に絞られる。
見つめられれば、肌の内側に熱がこもり、頭の芯がかすんでいく。思考が崩れ落ちそうになる。
「……福原」
「先生……」
「さすがにそれ言われると、歯止め効かなくなるぞ」
近距離で落とされた声には、吐息と色香が混じっていた。