不器用ハートにドクターのメス

このノートを見ていれば、自分のためというよりも、周りに迷惑をかけないためにという思いが、伝わってくるような気がしたからだ。

神崎の中で、真由美への印象がまたブレだしたときだった。


突然、強い風が吹いた。

それはまるで、誕生日ケーキのろうそくを吹き消す際のような、勢いのある、瞬間的なものだった。

神崎が手にしていたノートの、グレー色のカバーが、ぺらりとはがされる。


「え……」


その下に現れたものに、神崎は、はっと目を見張った。

カバーに隠れていたノートの表紙は……なんとも少女趣味な、クマのキャラクターのイラストだったのだ。

ピンク色で、ふわふわとした丸いフォルムのクマ。若干カントリー系統で、なんとなくレトロというか、一昔前感を漂わせているイラストだ。


「お前……こういうの、好きなのか?」


べつにどんなものが趣味であってもいいのだが、あまりにもイメージとかけ離れていたため、神崎はつい、そう尋ねていた。

同時に真由美の方に首を回し、そこで神崎は、ぽかんと口を開けてしまう。

耳だけではない。ほんのりではない。

真由美の顔は……真っ赤だった。

それはもう、沸騰した鍋に突っ込まれてしまったのかと思うほど。

旧書庫で見たときと同じだ。あの時は見間違いかと思っていた。

けれど今は、間違いじゃない。明らかに真っ赤だ。

夕日のせいではない。皮膚の内側からともった、照れの色。

耳までを均一に染め、肩をぎゅっと寄せ、目を潤ませて、真由美は羞恥に耐えている。

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