先生、ぼく死にたいんですが
「どうしましたか?」
「ぼく、死にたいです」
「どうして死にたいと思うのかな?」
「病院だから、色んな薬があるんですよね?それでぼくを殺してください。お願いします」
松岡の声は裕介には届いていないようだ。まるで話を聞いていない。松岡はおもむろに裕介の右手を両手で握った。突然のことに裕介は驚きを隠せない。否が応にも松岡の方に意識が向いてしまう。
「どうして、死にたいと思うのかな?」
「つまらないからです」
裕介がようやく松岡の問いに答える。最初の頃より、顔も少し上がってきたように思える。
「なにがつまらないのかな?」
「全部です。学校も、勉強も、遊びも、何もかも。何をしても楽しくないし、勉強もできないし、運動も苦手だし、喋るのも得意じゃないし、彼女もいないし、友達もいないし、クラスの奴らからはイジメられるし。生きるのが辛くて、苦しいです」
松岡は黙って裕介の話に耳を傾けている。手は依然として握ったままだ。
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