いつか孵る場所
今週は自分の家には一度も帰っていない。

ハルの家でシャワーを借りて一瞬だけ緊張を解く。

今日が歓迎会と聞いて胸騒ぎがするくらい嫌な予感がしていたのでハルを迎えにいけて良かった。
ハルも曖昧な部分が多くて誤解される、または利用されるタイプの人間だと思う。
あの男にいつかお持ち帰りされるんじゃないかと透はヒヤヒヤしている。



透が何故、家に帰られないのか。

月曜の当直で緊急搬送されてきた新生児。

近くの産院で吸引し新生児仮死。
状態がかなり悪く脳の出血が認められた。

新生児科医と共にやれるだけはやってみたけれど、小さな天使は眠り続けている。

翌朝の会議で今後の方針が決まるだろう。



「ハル、ありがとう」

慌ただしく透は服を着替えて玄関に向かう。

「透」

玄関で靴を履く透の名を呼び、

「頑張ってね」

と言ってハルは振り返る透の頬に軽くキスをした。

透は嬉しそうに笑うとハルの体を優しく抱きしめる。

「ありがとう、ハル!
元気と勇気を貰った!」

そう言うと透は急いで外に出た。
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