いつか孵る場所
「驚いた」

ハルは品々を並べてため息を吐く。
それなりのブランドからハイブランドのものまで様々であったが、見事にハルの好みを押さえていた。
サイズもバッチリ。
返品するものなんて一つもなかった。

「さすがは透さんね。
そういうセンスを至さん、兄弟なのにどうして持ってないんだろう~!」

桃子は笑いながら悔しそうな素振りを見せた。

「靴までピッタリ!」

ハルは一番気に入った物を履いて足を宙に浮かせた。
綺麗なラインのパンプス。
色も上品なベージュピンク。

「可愛い~!!」

桃子と神楽は手を叩いた。



「またいつでもお伺いいたします」

神楽はそう言い、お昼前には立ち去った。

- いつでもって…そうそう買わないけど -

と思うけれど、透の声ひとつで飛んでくるのだろう。



「でも…、これ、どこに入れたらいいんだろう」

ハルは部屋を見回した。

「あ、それも聞いてるよ!」

桃子がニコッと笑った。

「確かねえ…。あった」

一見、広いワンルームに見えるが実はロフトに上がるすぐそばに仕切りがあってその向こうはクローゼットになっていた。

「わ…。」

ここもまた、ハイセンスの塊だった。

「透さん、凄すぎね」

魅せるクローゼット、といったところか。

透の服や靴はまるでお店のディスプレイを見ているような感じで収納されている。
ちゃんと今買ったハルの服をすべて収納できるようになっている。
ハルが以前、家から持ってきた服が数枚、収納ボックスに入れられてあった。
泊まる時はいつも透がそっと出してくれていたから、こういうクローゼットがあるとは知らなかった。

「桃ちゃんから見ても透はハイスペック?」

思わず聞いた。

「そりゃ、凄いと思うわよ。色々な意味で」

「えっ、何、色々って?」

桃子は含み笑いをして

「まあ、これからわかるかなあ…。
それの準備の一環かな。今日のお買いモノ。
あ!!これ可愛い!!私もお揃いで買おうっと!!」

そう言うとハルの収納の手伝いを始めた。
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