いつか孵る場所
ハルは目を大きく見開く。

「拓海が亡くなったのは20年前の12月25日午前6時50分。
その時の死亡確認は兄さんがしたんだよ。
この子が産まれたのはその20年後の午前6時51分」

透は助産師に我が子を託すと両手で顔を押さえた。



「…偶然とはいえ、身近な人の生死にこんな風に関わるなんて思いもしなかった」



その言葉が重い…、ハルはそう思った。



透はその後、助産師と子供と共に新生児室に向かった。

一人、ハルは部屋に残される。
今しばらくこの部屋で体を休めて、病棟に行くことになるだろう。
…また個室。
しかも特別室。

きっとこの後、透の両親や至夫妻がやってくるだろう。

ハルはそっと目を閉じた。

真由にも、ナツにも報告しなくては。
そう思うのだけれど、今は異常に瞼が重い。

- ほんの少しだけ、眠ろう… -

その瞬間、天にも昇るようなふわふわした感覚がハルを襲った。






「大丈夫?」

声が聞こえてハルが目を開けると、周りは美しい菜の花畑だった。
心地よい風は吹いている。

「うん」

ハルはその人に手を引っ張られ、立ち上がる。

「良かったね、おめでとう」

「…透?」

雰囲気が透によく似ていた。
逆光で顔が良く見えない。

「ようやく、二人が一つになったわけだ」

「え、何言ってるの?」

「本当に良かったよ。どうなるかと思っていたけど」

透っぽい人の口元に笑みが浮かんだのが見えた。

「えっ、何の事?」

「きっと…あいつなら幸せにしてくれるよ。
何があってもあいつを信じるんだよ、いいね?」

「あなた、誰?」

「君が一番よく知っている男の、友達」

その瞬間、顔がはっきりと見えた。



「柏原君!」
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