いつか孵る場所
「あっ、ちょっとごめん」

透は携帯を取り出した。

そして会場の外へ出る。

真由はそのまま会場の中でぼんやりと全体を見つめていた。

− やっぱり居心地が悪いな… −

長い間、子育てやお店の事で必死だったので友達との溝が大きかった。

「真由、彼氏じゃなかったんだ〜」

かれんが再び声を掛けてきた。

「うん、違うよ」

再度否定する。

「結構お似合いだと思うんだけどなあ」

かれんは未練がましく言う。

「透君が相手にしないわよ、私なんて」

「そうかしら？結構気にしているようだけど」

かれんはどうにかして真由と透をくっ付けたいらしい。

「そりゃ気にするよ！大好きな旦那さんを亡くして、子育ても自分が全てしないといけないのに。友達だから心配するよ」

透はいつの間にか戻ってきてかれんを軽く睨んだ。

− それ以上は言うなよ −

透は牽制をする。

かれんは諦めて別のグループへ行った。

透はため息をつくと真由を見て

「ごめん、急患でどうしても戻らないといけなくなった」

透は携帯を握りしめる。

「もし帰るなら途中まで送るし」

「うん、ありがとう。でも仕事に向かうのに悪いからもう少しだけここにいてから電車で帰るね」

真由なりの気遣いを見せる。

そう、と透は言うと足早に会場を去った。
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