いつか孵る場所
「…何してるんですか?」

ドアを開けた瞬間、バラバラに散るナース達。

小児科担当の者もいた。



透は大きくため息をついて廊下を歩き始めた。

明日になれば、噂が噂を呼んで、あることないこと言われるのだろう。

− 帰ろ… −

多分、家に帰っても眠れないと思う。

透は歩きながら自分の右手を見つめた。

久しぶりに触れたハルの頬。

今でもドキドキしている。

もう二度、会うことはないんじゃないか、と心の隅にあった。

でも出会った。

透自身も急激に何かが変わろうとしている気配を感じている。

ハルに再会してから普段見慣れているものでも新鮮に見えた。

このまま離れるのが惜しくて強引な手を使って自分の連絡先も伝えた。

ワンギリで自分の携帯にも着信履歴を残した。

でも…自分から掛ける事なんて…出来ない。

それにもし、ハルに彼氏がいたら。

…それこそ立ち直れない。

嬉しいやら悲しいやら、透の心の中では葛藤の波にどっぷり襲われていた。
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