いつか孵る場所
「いらっしゃい〜!」

店のスタッフブルゾンを着た真由が透を見て手を挙げる。

透も軽く手を振った。

家に一人いたら気が狂いそうだし、絶対眠れないので真由が働くバイク屋、K-Racingにやって来た。

まだ興奮状態が続いている。

二人が会うのは同窓会以来。

「はい、どうぞ」

手土産を渡すと真由は嬉しそうにお礼を言い、

「お茶入れるね」

と言って奥に向かった。

土曜日の店内はお客さんも多く、ざわざわしていた。

「どうぞ」

「どうもありがとう」

カップの中は甘そうなミルクティーだった。

「それが飲みたいような顔をしてたから、甘めにしておいた」

真由は微笑む。

「…そんなに酷い顔をしてる?」

「目はちゃんと開いてるけど…疲れ果ててる」

「そう…」

透は一呼吸置いて

「ハル…昨日、救急車で運ばれてきた」

真由は何を言われたのかわからず、しばらく透の顔をマジマジ見つめ、やがて

「ええー!!!何ですってぇ!?」

店内にいた人全てが目を丸くして今にも倒れそうなくらい目を見開いている真由を見つめた。
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