いつか孵る場所
「今日、退院です。おめでとうございます」

2日後、だいぶ良くなったハルは退院することになった。
あの、大竹と会った日以降、透が病室に来ることはなかった。
それはそれで残念だけど、自分の気持ちを落ち着けるには良かった。

「淡路さん」

至はにっこりとほほ笑んで

「次は一度、経過観察で外来で診察したいと思います。また火曜日に来てもらえますか?それと仕事はそれ以降に復帰してくださいね」

「はい、ありがとうございます」

ハルも頭を下げた。



荷物をまとめて病棟を出て会計に向かう途中、外来を通った。

「高木さん、一診へお入りください」

さっきまで病棟にいたはずの至の声が聞こえた。

本当に大変な仕事だと思う。
心の中でもう一度至にお礼を言って廊下を歩いた。
小児科の前も通ったけれど、透が居るかどうかはわからなかった。

もうすぐ総合受付にたどり着くかどうかの頃。

透が待合室の親子に声を掛けていた。

「退院おめでとうございます」

透の優しくて甘い声が聞こえる。
ハルは思わず微笑んだ。

「バイバイ!!」

4歳くらいの女の子が透とバイバイして手をタッチしていた。

「バイバイ、またね」

透と母親が軽く会釈してふと見上げた先にハルの姿が入ってきた。

「ハル…」

透は右手を軽く挙げた。
ハルも軽く手を振り返す。
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