いつか孵る場所
「凄いね…。そんな奇跡のような話があるのね!」

鉄の女、の異名を持つ神立がハルの話を聞いて目を輝かせた。

「で、昨日、お泊まりだったのね」

クスッと神立は笑う。
ハルの慌てる様子を見て更に笑う。

「ここ…大竹くんには見られないようにね」

神立の手タレのような美しい指先がハルの左首元に触れる。

「普通にしていたらわからないけれど、屈んだりしたらわかるかも。
大竹くんだけじゃなく、他の妬み満載な女子軍団にも要注意よ!」

ハルの顔がみるみる赤くなるのを見て神立は可愛い!を連発した。

「いやあ…もう可愛くない歳なので本当に恥ずかしいです」

下を向くハルに神立は

「恋愛に歳は関係ないわ。
だって二人とも、浮気や不倫の関係じゃないし…。
二人が誰とも結婚もしていなくて、また再会した時も彼氏彼女がいなくて…。誰もこの恋を止める事は出来ないわよ。
止める奴は私が容赦しないわよ!」

そう優しくハルに微笑む神立は決して鉄の女じゃない。

そうハルは思う。



「ご馳走さまでした」

店を出て、ハルは神立に頭を下げる。

「いえいえ、こちらこそ素敵な恋愛話をありがとう。
また良かったら…時間が合えばお茶でもしましょう。
…そうね、私は大竹くんや噂好きな女子達を出来るだけ牽制するわ。それくらいしかお手伝いが出来ないけれど。
私は応援するから」

そう言ってキビキビと歩く神立は同じ女性から見ても、カッコイイの一言に尽きた。
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