いつか孵る場所
「全く…」

至はエレベーターが閉まるとそう呟く。

やはり透は自分の考えを曲げない。

昔は周りにいる家族の気持ちをあまり考えていない節があったのに今は多少なりとも考えるようになって、その辺りは成長したと思う。

一応は両親にハルとの結婚を認めて貰いたいようで少しはホッとしたのが正直なところだ。

ただ。

手段がマズイ。
両親に認めて貰うのに出来婚なんてすればハルの評価が落ちてしまう。
まあ、まだ出来婚するのかどうかは全くわからないけれど。

正々堂々と正面からぶつかってそれでも反対されるなら透は医師免許を持っているのだから病院のある所なら大抵は働ける。
今の病院を辞めて、二人で遠い地で暮らせば済むだけの事。



なのに。



− 透が最終手段に出るのは絶対にあの時、無理に別れさせたからだな −

透の若い頃に負った心の傷は深すぎた。

ハルを失った気持ちが今まで100回近い見合いを全て駄目にさせたのも至は知っている。

親は次々と透に見合い話を持ってきた。

透は一応、会うものの全てその日中に断っている。

親の顔に泥を塗りまくっているのを楽しんでいるかのようだった。



− 一種の復讐 … か −



そして最後の仕上げは…。

母が蹴散らした女の子が透の子を身籠ったら、きっと透の復讐は完成するのだろう。



「全く、親も親なら子も子だ。透ももっと違うやり方を…」

そう独り言を呟いて至は首を振った。



− …復讐といえどもハルちゃんとの子供は本当に望んでいるんだろう −

透は今まで抱えていた孤独を自分の家族を持つ事で消したいのだろう、と至は思う。

ようやく、自分の望みを叶えてくれる人に再会して、今度こそは…。



− 邪魔されたくもないし、失敗もしたくない…か −


色々考えているうちにエレベーターが開いた。



− まあ協力出来る事は最大限してやろう。僕の可愛い弟のために −



至はエレベーターを降りた。
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