いつか孵る場所
「これでいい?」

職員用のエレベーターの前で透は至に言う。

「何が?」

「一応、父さんには意思表示をした」

「ま…まあ、そう言われればそうだけど」

エレベーターが開く。

二人はそれぞれの階を押す。

「母さんはどうするの?」

至はそれが心配だった。

父は透の意思さえわかればそれ以上何も言わないはず。
確かに亭主関白で家庭をあまり顧みない人だが、透の勘が当たり、万が一孫が出来たらそれこそこの世の中、孫が一番大事!というタイプになるだろう。

− そうなれば少しは女遊びも控えるだろうし… −

至は思わず苦笑いをする。

母が子供に異常に執着する原因の1つに父の女遊びもあると至は思っている。

「…僕の作戦が上手くハマったらハルと一緒に実家に行くよ」

「…それって出来婚でしょ」

その瞬間、透の押した階に着いた。

「じゃあ兄さん、また」

そう言って透はエレベーターを降りた。
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