さくらの花が舞う頃に
きっと、出発時刻を遅らされて運転手さんも苛ついていたんだろう。
運転手さんの顔も結衣や女子生徒と同様、とてつもない形相になっている。
「あ、はい…… すみませんでした」
運転手さんの形相を見てさすがにびびったのか、女子生徒二人はそそくさと後ろの席に戻っていった。
「ふん。ガキのくせに私に喧嘩売ろうなんて10年早いのよ」
結衣が女子生徒の後ろ姿に向かってそう言いながら、俺の隣の席に座った。
「相変わらず喧嘩っ早いな。……で? 打ち合わせってなんだっけ?」
大人げない結衣に多少呆れながら、俺はさっきからずっと気になっていたことを尋ねた。
結衣がちらりと横目で俺を見る。そして、とんでもないことを言った。
「嘘に決まってるじゃん」