大人の恋は波乱だらけ!?
マンションを出て当てもなくフラフラと歩き出す。
勿論、マヨネーズなんて買いに来た訳ではない、咄嗟に出たいい訳だ。
もう少しマシな事を言えなかったか、後悔しても遅いがタメ息しか出なかった。


「……『逃げるのはよせ』か……」


ポツリと呟いた言葉は苦しいくらいに胸に広がっていく。
それは思い当たる節があるからだろうか。

彼の言う通り私は今まで、逃げる事しかしてこなかった。
夢から、就活から、自分の気持ちから。
全てから逃げ出して今の私が出来てきた。

身の丈に合った、そう言ってしまえば聞こえはいいかもしれない。
だけど結局は……。


「……妥協した人生ってことだよね」


思わず口から出た言葉。
それにつられる様に涙が零れ落ちた。

すれ違う人はギョッとする様に私を見てくる。
早く泣き止まないとそう思っているのに、想いとは裏腹に涙が止まらない。


「うっ……」

「……桜木……?」


感情が爆発する寸前に私を包み込む様に優しい声が向けられた。
声の方に顔を向ければそこにいたのは……。


「高梨……部長……?」


驚いた顔をしながら高梨部長が立っていた。
彼を見た瞬間、ギリギリで保たれていた理性が切れる様な感覚がした。


「高梨部ちょ……!!」

「桜木!?」


彼に駆け寄りその胸へと抱き着く。
高梨部長は迷うことなく私を受け止めると優しく背中を撫でてくれた。
何も聞こうとせず抱きしめてくれる彼の優しさに甘える様に私は声を押し殺して泣き続けた。
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