大人の恋は波乱だらけ!?
電車の揺れに身を任せていれば眠気が襲ってくる。
睡魔と闘っていると急に電車がガクンと停まった。
プシュと音を立てて扉が開く。

次の駅に着いたのか、さっきので眠気が醒めちゃった。
瞬きをしていれば扉から背の高い男の人が入ってくる。
その人は私の隣に立ち吊革へと掴まっていた。

いつもはこの駅では誰も乗ってこないのに、珍しい事もあるんだな。
そう思いながら興味本位でその人の顔を盗み見る。


「あっ……」


思わず声が漏れ、慌てて口を閉じる。
そのお蔭で誰も不審に思わなかったみたいだ。
心を落ち着かせながらもう1度、男の人に目を向けた。

清潔そうな黒い髪に、爽やかな横顔。
間違いない、昨日バーで見た男の人だ。

小説家志望の……。

昨夜ベッドで考えた人が隣にいる。
それだけなのに胸がドクンドクンと煩く騒ぎ立てる。
心臓の音が聞こえないかが心配だ。


「……」


寝ているのか考え事をしているのかは分からないが、目を瞑りながら立っている男の人。
立ち姿でさえ絵になっていて格好良い。

座っている女子高生なんて彼に見惚れている。
これが漫画だったら、目がハートになっているだろう。

他の乗客だってチラチラと彼を見ている。
まぁこれだけ格好良かったら仕方がないのかもしれないが……。

今だけでもこれだけ見られているという事は、彼の人生はさぞかし大変だったに違いない。
そう思うと少しだけ気の毒に思えた。
< 24 / 514 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop