大人の恋は波乱だらけ！？
「高梨……部長……？」


鼻を掠めるシトラス系の香りが私を包み込んでいた。
体に与えられる温もりは優しくて、涙が零れ落ちそうになるくらい幸せだった。


「ごめん、ごめんな……」


何度も何度も謝る彼の体は僅かに震えていた。
そんな彼を守りたくて、高梨部長の背中に手を回す。


「謝らないで下さい」

「ごめん、俺……不安だったんだ」

「え……？」


高梨部長は私を抱きしめたまま話し出す。


「俺ばかりお前の事が好きで、意識しているのも俺だけだと思っていた。
勿論、嫉妬しているのも」

「え……？嫉妬……？」


高梨部長が、嫉妬をしていたという事？
分からずに彼の胸の中で顔を上げれば、哀しそうに笑われる。


「ああ、お前の事となると我が抑えれなくなるんだ。
田中の事や新條さんの事もそうだし、他の男社員の奴らだってお前を気にかけている。
バーで飲んでいる時だって、見知らぬ男たちに厭らしい目で見られているの気付いていないだろう？」

「……そんな訳……」

「あるんだよ、お前は鈍すぎて分かってないだけだ」


呆れたように笑われ、何も言い返せなくなってしまう。
彼の顔は寂しそうで、辛そうにも見えたから。
暫く黙っていれば、抱きしめられる力が強くなっていく。


「高梨部長？」

「俺だってな……お前が好きで好きで仕方がないんだよ。
他の男になんか見せたくないほどお前に惚れている。
只でさえ、他の男と一緒に住んでいるという心配要素があるのに、これ以上心配させないでくれ……」


彼の胸の内が明らかになり、私の胸へと沁み渡っていく。
でも、どんな言葉を掛けたらいいか私には分からなかった。
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