大人の恋は波乱だらけ!?
「昴さ……」

「来い」

「えっ……」


強引に私の手を掴みベンチから立たせる昴さん。
その姿はいつもの爽やかな彼の面影なんか全く見られなかった。


「……」

「昴さん……あの……」

「……」


彼は何も喋らない。
それどころか私の方を向こうともしない。

だけど繋がれた手は温かくて。
私の心を揺らしていくんだ。


「スバルさん!葉月!!」


遠くの方から聞き慣れた声が向けられる。

明美だ。

明美は私たちの方に向かって走ってきている。

角度的には繋がれている手は見えていないはず。

そう思って手を振り離そうとするけれど。
昴さんは力強く握りしめたまま離さなかった。

どうして?
こんな所を見られたら困るのは昴さんも同じはずなのに。

彼は明美を気にする事なく歩き続けた。


「スバルさ……」

「明美……これは……」


私たちの手を見ると真っ青な顔で固まってしまう。
言い訳を考えようと頭を回転させるけど。
どんな事も所詮、言い訳にしか聞こえない。
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