大人の恋は波乱だらけ！？
「桜木！！」


昴さんの家を出て当てもなく歩いていれば後ろから聞き慣れた声が聞こえてくる。
だけど、振り返る事は出来なかった。


「はい」

「こっち向けよ」

「……すみません」

「向けって……あっ……」


腕を掴まれて無理やり体を反転させられる。
私の顔を見た瞬間、高梨部長は気まずそうに顔を歪めた。

それもそのはず。
だって私の顔は涙でぐちゃぐちゃだったから。

でもすぐに私を抱きしめてくれる。
まるで、何があったかを察した様に。


「高梨部長……離して下さい……1人になりたいんです」


今は何も考えたくない。

と、言うより彼の前で泣くなんて許されない。
しかも他の男性の事で。

高梨部長を傷付けておいて、これ以上彼に甘える訳にはいかない。


「出来る訳ないだろう！！」


彼の怒鳴り声。
痛いくらいに抱きしめられる体。

何だか無性に泣きたくて。
彼の服を掴みながら声を上げて泣いた。

すれ違う人たちの視線が突き刺さるのに、高梨部長は構わずにずっと抱きしめ続けてくれた。
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