SECRET COCKTAIL
胸が痛かった。
出来るなら、松川君の想いに応えてあげたかった。
例えそれが、ズルい事なのだとしても。
どうして、片想いなんてあるんだろう。
誰にとっても、報われない恋なんてなければいいのに。
そう思ってしまうのは、私の恋も、きっと叶わないと知っているから。
恋を自覚した途端に、失恋の痛みを知るなんて残酷すぎる。
ふうと大きく息を吐いた。
吐いた息は白く舞って、周囲の空気に溶けていく。
私の気持ちも、どこに向ける事もできず、こうやって消えていくのだろうか。
どうしよう。
しばらくぼんやりとその場に立ちすくんでいた。
いつの間にか日は落ちて。
夕暮れを知らせる風は、肌に冷たかった。
松川君が言ってくれたように、ちゃんと彼の事を考えよう。
せめて誠実に彼の気持ちと向き合おう。
心の中でそう決めて、くるりと向きを変えた。