SECRET COCKTAIL



胸が痛かった。



出来るなら、松川君の想いに応えてあげたかった。

例えそれが、ズルい事なのだとしても。




どうして、片想いなんてあるんだろう。


誰にとっても、報われない恋なんてなければいいのに。


そう思ってしまうのは、私の恋も、きっと叶わないと知っているから。



恋を自覚した途端に、失恋の痛みを知るなんて残酷すぎる。



ふうと大きく息を吐いた。


吐いた息は白く舞って、周囲の空気に溶けていく。


私の気持ちも、どこに向ける事もできず、こうやって消えていくのだろうか。





どうしよう。


しばらくぼんやりとその場に立ちすくんでいた。



いつの間にか日は落ちて。

夕暮れを知らせる風は、肌に冷たかった。



松川君が言ってくれたように、ちゃんと彼の事を考えよう。

せめて誠実に彼の気持ちと向き合おう。



心の中でそう決めて、くるりと向きを変えた。

< 142 / 341 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop