SECRET COCKTAIL
「昔、俺の生徒に、可愛い女の子がいたんだよ」
「え・・・」
雅君はチラリと私を見て小さく微笑んで。
今度は思考を巡らすようにゆっくり視線を逸らした。
「俺に良く懐いていて、本当に可愛かった。妹がいたら、こんな気持ちになるのかなって、その時は良く思ってたよ」
それって、まさか。
「その子はさ。家族に宝物みたいに大事にされてて、彼女が笑うだけでみんなが幸せになれるような女の子だった。俺も、彼女が傍にいるだけで、随分優しい気持ちになれたよ」
「・・・・・」
「だけど、ある日気付いたんだ。その子が、同級生の男と一緒に帰ってきた時。無性にモヤモヤする自分の気持ちにさ。ああ、いつかこの子は、自分じゃない誰かの物になってしまうんだろうって。そんな事を考えたら、胸がじりじりと焦げ付くかと思った。その時に分かったんだ。これは妹に対する感情なんかじゃないって。そうだ、これは嫉妬なんだってな」
「う、そ。嘘だよ」
だって、雅君は、あの時彼女がいて。
私の事なんて、何とも思っていなかったはずなのに。