SECRET COCKTAIL
「調理師の免許取って、今は、親父の知り合いのレストランで働いてるんだ」
「そう。頑張ってるんだね」
良かった。
夢が、叶ったんだ。
嬉しそうに弟の話をする雅君を見ていて、こちらまで嬉しさが込み上げる。
あの時。
弟には何も知らせず。
彼の進学だけを望んでいた雅君の想いが実ったんだ。
それが、堪らなく嬉しかった。
「あいつ、親父の味を教えてくれって俺の所に来たんだよ。親父が元気な時、あいつまだ中学生だったから、何も教えてもらえなかったからってさ」
「そっか。雅君が知ってるお父さんの味を知りたいんだね」
「ああ、だから、俺が知ってる事はみんな教えてやるつもり」
例え、お父さんのお店を継ぐ事が叶わなくても。
こうしてお父さんの味を伝えて行けるのなら、きっとそれだけで雅君は嬉しいに違いない。