強引な彼の求愛宣言!
「すみません深田さん、ちょっといいですか?」



定時の17時20分がもうすぐ迫る頃。

今日1日で使ったメモ紙や伝票の書き損じをシュレッダーにかけていると、三木くんに声をかけられる。

動かす手は止めず、私は顔を向けた。



「うん、なぁに?」

「東明不動産さんの件なんですけど。近々、Webバンキングの契約をしていただけることになってるんです。悪いんですが書類一式、用意してもらっていいですか?」



東明不動産。武藤さんのいる会社だ。

そっか、今日の電話は、その件だったのかな。


私と三木くんは同い年の27歳だけれど、短大卒の私の方が入庫時期は2年先輩だ。

そんなわけで基本的に敬語で話してくれる三木くんに対し、私は普段『くん』付けだしタメ口。まあ、お客さまの前だと『三木さん』呼びに敬語だけど。


後輩らしくお伺いをたてる彼に、私はうなずく。



「うん。わかりました」

「助かります。来週の頭くらいには来ていただけると思うので」

「了解」



今日は木曜日。来週契約なら、書類は明日になってから準備しとけばいいかなー。

そんで、向こうから来店してくださるってことは……もしかして、来るのは武藤さん? だよね?

うわ、うわわ、どうしよ。会えるかどうかわかんないけど、一応いつもよりばっちりメイクにしとこうかな……!
< 4 / 76 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop