オタク女子。

私もあんな風になりたい。

しかし、残念ながら私の今いる部署はひかると私が一番後輩で、誰かを指導する側に回ったことはない。人事部も来年度はさすがに誰かをこの部に回してくるようではあるけれど。


「あ、星野さん。ちょっといい?」
「はい!」


浅野さんがPC越しに手をちょいちょいとさせて、私を呼んだ。その手の動きでさえ可愛い、かっこいい、と思ってしまう私はやはり異常だろうか。


「ちょっと内密な話だからこっち」


浅野さんに促されるまま私は第2会議室へと入る。私が入ると浅野さんも後から入ってきてその扉を閉めた。


「そこ座っていいよ」
「あ、はい」


最初は浅野さんに呼ばれて高まっていた気持ちがだんだんと嫌な方向へと向いていく。

これってもしかしてお叱りを受けるのでは……?私なにかしらいつもミスしてるし、お叱りを受ける理由ならたくさん持っている。やばい、やばい。

縮こまって浅野さんからのアクションを待つ。対面にいる浅野さんはファイルから一枚の白い紙を取り出して、私に差し出した。


「星野さん、海外研修に興味ない?」
「…海外…ですか?」

「うん」


浅野さんがキラリーンと綺麗に揃った歯を見せて笑った。









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