椿の姫君
蘇芳

しかし、再会の瞬間は想像しているよりはるかに早く訪れた。

「さっきの木登り娘。」

「椿の髪の毛の人だ。」

2人は、都の中央に位置する、城の中で再会した。

この国の姫君と、異国の地からやって来た王子として。

少女、もとい姫君は、思わず手に持っていた椿の花を後ろ手に隠した。

今日来る予定の異国の王子に見せたかったなんて、恥ずかしくてとても言えない。

少年こと王子は、そんな姫君の行動に苦笑した。

「まさか、ここでまた会うことになるなんてね。
姫君が木登りなんて、想像してなかった。」

「どうせ御転婆姫だもん。
こっちこそ、異国から来た王子が1人で歩いてるなんて思わなかった。」

「初めて来た街は、1人でふらふらするのが一番好きなもので。」

2人は互いに思った事を言い合うと、顔を見合わせ、笑い出した。

「その椿の花を見せたい相手って、俺?」

王子が優しく問いかけると、姫君はこくりと頷いた。

「そう。
この国以外では椿の花は咲かないって、本草学者に聞いたから、見せて差し上げたくて。」

「ありがとう、嬉しい。
その花の真下で君に会えたことも含めて、ね。」

「私も、貴方に見せることが出来て、喜んでくれて嬉しい。」

今日、この地で2人は婚約するために、出逢うはずだった。

王の一人娘の姫君と、姫に婿入りする第三王子、そんな関係で。

その前に、たまたま椿の大木が引き合わせてくれた。

2人は運命という物を感じ、それから間も無くして、姫君は女王として即位した。

城のあちこちに、2人の出会いのきっかけになった椿が植えられて、後に国民からは椿城と呼ばれた。

2人は互いに協力しあいながら、この先何十年に及んで良く国を治めた。

橋の近くに今年も咲いた椿の花は、今日も誰かを幸せに導いている。



< 2 / 2 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

紅芳記
深菜都/著

総文字数/151,273

歴史・時代454ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
戦の絶えなかった動乱の世も、 天下が統一された泰平の世も。 +゜.・. * * *.・.゜+ 真田家嫡男、真田信幸の妻となったのは 連戦無傷で名高い戦国最強・本多忠勝が一の姫。 これは、動乱の世を生き抜いた一人の姫君の物語──。 ◇◆◇ ※この物語は、史実をもとに創作した歴史物語です。
花日記
深菜都/著

総文字数/52,356

歴史・時代103ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
『愚かな君主』 人は俺を、そう笑う。 *** ある日 『女』が降ってきた。 ☆★☆ 平成23年 2月11日 開幕 ※これはある程度まで史実を盛り込んで作った物語です
魔女の悪戯
深菜都/著

総文字数/33,342

ファンタジー73ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
・・***・・ 岩佐城主の長女・柚姫の守り役 杉松忠純(すぎまつただすみ) × クリスティア王国の騎士でラミア王女のお気に入り レオナルド・ジルファース 世界と世界の間に住むという魔女の悪戯で、心が入れ代わってしまった二人。 武士×騎士 ──永遠の忠誠を、我が姫君に── START 2011.11.28 FINISH 2012.03.19 *minato*

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop