恋の後味はとびきり甘く
 咲恵さんと話を煮詰めようとしたとき、店のドアが開いた。顔を上げると涼介くんが入ってくるのが見えた。昨日の出来事を思うと、こうして来てくれただけでもうれしい。

「いらっしゃいませ、こんにちは」

 私が言うと、涼介くんは「ども」と言ってぎこちなく頭を下げた。

 どうしたんだろう、と思ったとき、彼に続いて十代後半くらいの女の子がひとり入ってきた。

「あー、ここなんだぁ。涼くんが気に入ってるってトリュフのお店」

 ふーん、と言いながらぐるりと店内を見回した彼女は、セミロングの明るい茶髪に個性的なパーマをかけた背の低い子で、ざっくりとしたニットとショートパンツがすごく似合っている。小柄なのに出るとこが出ているのが、ニットの上からでもわかる。

「ね、この前食べておいしかったって言ってたのはどれ?」

 言いながら彼女が涼介くんの腕を取って、ショーケースへと引っ張っていく。

 それを見たとたん、私の胸がギューッと締めつけられたように痛くなった。

「離せって」
「なんでよぅ」

 彼女がぷぅっと頬を膨らませて、涼介くんの腕に自分の腕を絡めた。
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