恋の後味はとびきり甘く
「なんでじゃないだろ、こら、ユキ」

 ユキ、だって。涼介くん、彼女のことを呼び捨てにしてるんだ。

 そんなに仲のいい女の子がいたんだ。彼女を連れてきたのは、昨日までの私とのことが本当に“なかったこと”なんだと念押ししたいからなの?

 そんなことを考えたら、胸の痛みがひどくなってきた。

 ユキさんは涼介くんの腕に腕を絡めたまま、ショーケースを覗き込んだが、すぐに顔を上げて彼を見た。

「なーんか聞いたことのないブランドのばっかだね~」
「鈴音さんが自分の足と舌で探してきたんだよ」
「ふーん、あの人、鈴音さんって言うんだぁ」

 ユキさんが私を見た。涼介くんを見ていたときの甘えたようなのとは違って、鋭い視線を送ってくる。

 彼女は私を値踏みするようにじろじろ見てから、涼介くんに言う。

「あー、そっかぁ。涼くんはオーナーショコラティエを目指してるんだもんね。このおねーさんは自分の店を持ってるから、少しくらいはあたしたちの参考になるかなって思ったの?」

 なんだかやたらと“おねーさん”を強調されている気がする。まあ、オバサンとか言われるよりかはいいけど。
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