恋の後味はとびきり甘く
「少しじゃないよ。すごく参考になるんだ」

 涼介くんがユキさんに言ってから、私に困った顔を向けた。

「こいつ、クラスメイトなんですけど、俺がモン・トレゾーの話をしたら、どうしても来たいって言って聞かなくて」
「あ、いいんですよ。ゆっくり見ていってください」

 私の言葉を聞いて、ユキさんが涼介くんに言う。

「ほーら、おねーさんだっていいって言ってるじゃない。さすがに年の功よね。大人は言うことが違う」

 年の功だとか大人だとか、なんかいちいち癪に障るなぁ。

「で、こうして来たからにはなんか買うんだよな?」

 涼介くんに言われて、彼女が甘えた声を出す。

「んー、知らないブランドのばっかだから、どれ買ったらいいのかわかんなーい。ねえ、涼くんが選んでよ~」
「なに言ってんだよ。自分で選ぶのが楽しいんだぞ」
「でもぉ~」
「あー、もう、焦れったいな。俺、今からバイトなんだよ。おまえ、ひとりでゆっくり選べよな。それじゃあな」

 涼介くんが言って、彼女の腕の中から腕を引き抜こうとしたが、彼女はそうはさせまいと両腕を彼の腕に巻きつけた。なんか……胸を押しつけているように見えなくもないけど。
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