かわいい君まであと少し
 営業マンとしてそんなに安ものを着ているとは思えないな。いいネクタイしてるし。でも、女からのプレゼントって場合もあるのか。それならこれぐらいの奮発する時もあるよね。望月課長って、過去の女に貰ったものとか気にせずに使いそう。
「おい、今何考えてる?」
「はい?」
「変な顔してるぞ」
「それは元からなのでお気になさらずに」
 くだらない詮索を一人で勝手にして変な顔になるなんてバカバカしい。
「いつもはかわいいと思うけど」
「はい、そうですか」
 何だか妙にいらっとした感情が湧いてきた。窓の外を眺め、この感情を鎮めようとする。
 これから志穂ちゃんを迎えに行くんだと自分に言い聞かせ、志穂ちゃんの笑顔を思い出すと穏やかな気持ちになった。
 志穂ちゃんは偉大だ。
 私の対応が素っ気なかったせいか、望月課長はとくに話しかけてこなかった。
 聡さんのマンションに着き、三一一号室へ向かった。
「れい、ゆた」
 玄関のドアが開くと志穂ちゃんが笑顔で迎えてくれた。
「志穂ちゃん、ただいま」
 志穂ちゃんを抱き締めると「れい」と言って微笑んでいた。
「ただいま」
 私の後ろから大きな手が志穂ちゃんの頭を撫でた。志穂ちゃんから体を離すと「ゆた」と言って、けたけたと笑っていた。
 部屋に入ると、テーブルには美味しそうなハンバーグが並べられていた。
「どうぞ座ってください」と聡さんはご飯とお味噌汁を並べながら言った。

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