かわいい君まであと少し
「悠兄、藤崎さんに何も説明ししないできただろう。藤崎さん、固まっちゃってるよ」
「ごめん、怜子。びっくりしちゃったよな」
「ちょっと」
 この状況が理解できず、誰を見ればいいかもわからない。
「立ち話もなんですし、お席へご案内します」
 専務の娘、井上さんが、窓側の奥の席へと案内してくれた。
「今日のメニューはおまかせとなっております。どうぞごゆっくり」
 吉田さんと井上さんは軽く会釈をすると、厨房へと消えていった。
「あの、これどういうことですか?」
「簡単に説明すると、耕喜と絵里さんは結婚を前提に付き合っている。ただ専務が認めてくれないんだ」
 あの二人の関係性はよくわかった。なぜ、彼氏の幼馴染とお見合いしてるんだ。
「お見合いのこと考えてるんだろう」
「はい。まだ理解ができていなくて」
「それはな」と望月課長が説明しようとしたとき、井上さんがサラダを持ってきた。
「日替わりシーフードサラダです。こちらのお取り皿をお使いください」
「絵里ちゃん、見合いの話、説明してくれないか」
 望月課長が井上さんに言うと「ごめんなさい」と体を九十度に曲げて謝った。
「実は、私と耕喜の結婚を父が認めてくれないんです。それで父がお見合い話をいくつも持ってくるようになって。最初は私も断っていたんです。何度も断るうちに、無理やりお見合いさせられそうになったんです。お見合い相手の候補者の中に望月さんがいたんです。望月さんなら耕喜と私の関係も知っているので、上手く動いてくれうんじゃないかと思って相談に乗ってもらったんです」

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