かわいい君まであと少し
「そんなわけないだろ。引っ越すときに、壊れていることに気が付いて捨てた。こっちに越してきてから買えばいいかと思って、今はない」
 壊れていることに気が付いてって、ここ最近は炊飯器を使っていなかったってことじゃない。
「そうですか。明日、買ってくださいね」
「なんで明日」
「志穂ちゃんに栄養バランスの整った食事を作るためです。ずっとパンばかり食べさせる気ですか?」
「わかりました。なんか、藤崎、随分上から目線だな」
「食生活に関して私のほうが上だと思います」

「志穂、お姉さんがいじめるよ」
 望月課長は志穂ちゃんを味方につけようとした。志穂ちゃんは私のほうに、とことこと歩いてきた。そして私の足に抱きついた。
「志穂ちゃんはお利口さんね。あの叔父さんがダメなんだよね」
 志穂ちゃんの目線までしゃがむと、志穂ちゃんはなぜか両腕を上げてバンサイの格好をしながら「ダーメ、ダーメ、ダーメ」と繰り返した。

「志穂は藤崎のほうが好きだな。あと藤崎、俺はオジサンではない」
「何言ってるんですか? 志穂ちゃんと望月課長は姪と叔父の関係じゃないですか。もしかして“おっさん”って意味だと思いました?」
 望月課長は不貞腐れながら何かを探している。
「タバコは隠しましたから」
「ああ、禁煙だった」
「志穂ちゃん、今からご飯作るから、叔父さんと一緒に待っててね」

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