かわいい君まであと少し
 この土日用に買った食材で作れそうなものばかりだ。
「望月課長は夕ご飯どうします?」
「ピザでも頼むは」
「いつもそういう食生活なんですか?」
「休みの日は」
「体に悪いですよ。いいです。ついでに何か作りますね」
「いいのか?」と、なんとも嬉しそうな顔で言ってきた。
 その顔に釣られたのか、志穂ちゃんも、楽しそうに「まんま、まんま」と繰り返している。
「はい。ただ、赤ちゃん用の食事を作るのは初めてなので、少し時間がかかりますけど」
「ゆっくり作ってくれて構わないよ」
「そうですか。じゃあ、キッチンお借りします」
「どうぞ。あるもの好きに使っていいから。あと、紙袋の中に志穂が普段使っている食器が入っているから、それを使ってくれ」
「わかりました」

 とりあえず、包丁やお鍋を出そうとシンク下のキャビネット開けてびっくりした。
 鍋とフライパンが一つずつと包丁が一本あるだけだった。引き出しを開ければ、缶切りとキッチンバサミ、フォーク、スプーン、箸が無造作に入っていた。
 本当に料理しない人なんだな。オーブンレンジはあるんだ。その横に食パン。朝ご飯はトーストなのだろうか。

「望月課長、炊飯器は?」
「ない」
「え?」
「ない」
 志穂ちゃんをあやしながら、当たり前だろという感じで言われた。
「あの、炊飯器ないって。今まで白米食べてなかったんですか?」

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