キミに恋の残業を命ずる
「まったく…どうしてあんたなんかが…。おかげであたしはいい笑い者よ。どうして、あんたみたいななにもできないグズが…」


ひさしぶりにきかされた田中さんの中傷は、わたしの癒えかけていた胸に鈍い痛みをよみがえらせ、そして、怒りをにじみださせた。

どうしてこの人はいつもわたしをないがしろにするの…?
わたしのなにがいけないの?
グズだけど、ドジだけど、そんな自分を変えたくて足掻いている、あなたと同じ普通の人間だよ?


ちがいがあるとするなら、わたしはわたしなりにがんばっている、ってところだよ。


わたしが営業事務に行けたのは、わたしががんばって勝ち取った結果だよ。

この人がなにかがんばっていたというの?
現状にいらつくだけで、ひがんで、八つ当たりしかしないで、なにも変わろうとしてなかったくせに。

こんな人に、わたしのことをとやかく言われたくない。

課長との幸せな日々を、邪魔されたくない。


「田中さんに、そんなこと言われたくない」

「は?」

「あなただけには、否定されたくない!」
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