放課後、キミとふたりきり。

「お前に譲れないものとかねぇのかよ」

「え……」



なぜか悔しそうに響いた矢野くんの声に驚いた。


譲れないものってなんだろう。

なんと答えたらいいのか考えていると、矢野くんがうつむいてしまった。


彼の心の扉が閉じていくのがわかって焦りが生まれる。

何か言わなくちゃ。何か。



「あの……」


「あー、まだいた!」



突然教室に響いた明るい声に、肩が跳ねた。

振り返ると教室の前の方のドアから、ゆるく巻かれた髪を揺らして藤枝さんが顔をのぞかせていた。
< 172 / 223 >

この作品をシェア

pagetop