放課後、キミとふたりきり。
「お前に譲れないものとかねぇのかよ」
「え……」
なぜか悔しそうに響いた矢野くんの声に驚いた。
譲れないものってなんだろう。
なんと答えたらいいのか考えていると、矢野くんがうつむいてしまった。
彼の心の扉が閉じていくのがわかって焦りが生まれる。
何か言わなくちゃ。何か。
「あの……」
「あー、まだいた!」
突然教室に響いた明るい声に、肩が跳ねた。
振り返ると教室の前の方のドアから、ゆるく巻かれた髪を揺らして藤枝さんが顔をのぞかせていた。