私、普通の女の子じゃないの。



「会沢さん...?」

ふいに声を掛けられた。


私はゆっくりと顔を見上げた。
担任の先生だ。きっと見回りに来たのだろう。


しかし、私は涙を止めることは出来ず、
言葉を発することも出来なかった。


静かに泣きながら
ただただ先生の顔を見つめた。


「どうしたの~~?」


先生は心配して私を抱き締めた。


(先生、私、辛かったの。怖かったの。)
 

心の声で喋りかけた。 


「こんなに震えて..。保健室行こうか」
  

先生は優しく私を抱き締めながら
ゆっくりと保健室へ向かってくれた。

私の頭や背中を沢山撫でてくれた。

久々に感じる暖かい人の温もり。
私は少しだけ安心した。寒さで怯えてた心が少しずつ溶けていく。


冷たい暗闇に私の希望の灯りが灯った瞬間。 


その灯りは小さくとも懸命に生きようとしていた。


(よかった、、もう大丈夫、、)


しかし、残念なことにその命は短かった。一瞬で消え失せ、そして、一瞬で私を凍りの世界へ引きずり込んだ。 


(ど、どうして、、)


保健室へ向かう途中、私は見てしまったのだ。

廊下の奥から、彼がもの凄い怖い顔をしてこちらを見ていたことを。


(彼が見ている、、彼が怒っている、、)


私は震えた。そして再びあの恐怖が襲ってきた。


“「言ったらどうなるか分かってるよね?」”
 
  
彼の言葉が何度も頭に鳴り響いた。
私は言いたくても言えない狭間にいることを思い知らされた。


私はすがるように先生を見つめた。


先生は私の視線に気付き、微笑みながら

「保健室行ったらゆっくり話そうね」

と言った。 


私は、何も言えず下を向いた。 


彼とはもう一緒に居ないのに、
彼との行為はもう終わったのに、
それでも私の心に黒く染み付いていることを感じた。
 

彼は薄気味悪い笑みとともに
私をどこまでも蝕んでいったのだった。






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