6月の花嫁
決意 : リク
明日はどうしても休めない会議だ。
ミホのことは心配だし、本当はできることなら付き添ってやりたかった。
医者が詳しい検査だとか言ってたよな…
悪い病気じゃあひませんように。

飛行機を降りて空港からタクシーで家に帰る途中、静かな車内で鳴った携帯の通知音。
_ミホだ。

俺は慌てて携帯を開いた。

そして1番最初に飛び込んだ文字は

《別れよう》という言葉。

一瞬文を読む目が止まる。思考も、なにもかも止まった。でも、急すぎた。彼女が俺に別れを告げるなんて…
ほったらかしにして帰ってしまったからだろうか、そんなことも考えたが、ミホに限って怒っても別れを告げるまではないと思った。

だから俺は、ミホは大変な病気なんだとそう感じた。きっとあいつはきっと長くないんだ。だから俺に気を使って別れようなんて言ってる。

《 ミホ、俺は別れない。ミホのわがままはこれまでたくさん聞いてきたけど、今回ばかりは聞かないよ。俺にはまだ何もわからないけど、2人で乗り越えよう。ミホには俺がついてる。》

咄嗟に動き出した指はそう文字を打っていて。
送信を押そうとしたが、一瞬戸惑った。

ミホは今きっと苦しいんだ。

俺は書いたメールの本文を削除した。

《 明日、会議が終わったら会いに行くね。》

そうとだけ書いたメールを送信しては、携帯を握り締めて、窓から景色を眺める。

薄々、医学部を卒業した俺にはわかっていた。ミホが倒れたのは頭痛が原因であること。
吐き気を伴っていたこと。
呂律がまわらなくなったこと。
脳に異常が見つかったんだと、ミホからのメールで確信を持ったからこそ、ミホからの別れ話は無視をした。

まともに別れ話なんてできるような状態じゃないだろう。

もともとそんなに強くない彼女のことを考えると今直ぐにでも会いに行きたかった。

明日、会議が終われば直ぐに会いに行こう。
ミホ、明日はまだ_
_ 生きていて下さい。

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