〈短編〉裏切りの果てに待っているものは……
無力(慧子視点)
蒼が親に捨てられ
屋上から飛び降りたと
知ったのは翌日だった。

私は授業をサボり
屋上へ向かうと
幽霊になった蒼がいた。

〔慧子さん〕

目が合うと
苦笑した顔になった。

『ごめん』

何故謝ったのかわからないけど
きっと蒼が生きてるうちに
何もできなかった
自己嫌悪からかも知れない。

霊感が強いあたしは
校内にどれくらい霊が
いるか覚えている。

だけど、親友で
片想いの相手の霊なんて
できれば会いたくなかった……

それも、こんなに早く……

〔貴女が謝ることは
何もないんですよ〕

生前と変わらない
優しい笑みを浮かべて
しゃがみこんだあたしに
合わせて蒼もしゃがんだ。

そして、頭を撫でてくれた。

『もっと一緒に居たかった。
沢山話して沢山遊んで……』

言っている途中で涙が
止めどなく溢れてくる。

あたしは密かに蒼が好きだった。

でもだから、味方だったわけじゃない。

確かに恋心もあったけど
それ以前に蒼があんなこと
するわけないと知っていたし
普段の蒼を見ていれば
わかるはずなのに
被害者ぶってる奴(本当は加害者)が
転校して来たばかりの女って
いうだけで、男の蒼が
加害者(本当は被害者)にされた。

〔慧子さん、僕は
幸せだったんです。
貴女が居てくれましたから〕

蒼の言葉で更に
涙が溢れてしまった。

〔僕は死んでしまいましたが
貴女はいじめられたり
していませんか?〕

なんで誰も気付かなかったのだろう。

彼がこんなに優しい人だと。

死して尚あたし(ひと)の
心配をしてしまうような人なのに……

『大丈夫だよ』

“いじめ”にはあっていない。

あれは“嫌がらせ”だ。

それに、もうすぐ
蒼の無実を証明できる。

“加害者”と“被害者”が
ひっくり返ってしまった
全貌を教え、あの女を
地獄へ叩き落としてやる‼
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