イジワルなカレの愛情表現
どういう意味? どうしてそんなことを言うの? それじゃまるで――。

心臓の鼓動が鼓膜を刺激する中、彼はふわりと微笑み囁いた。


「言っただろ? 尽くす女は嫌いじゃないって」

「……っ!」


その瞬間、全身の熱が全部顔に集中していく。


どうしよう、顔が熱い。今の私、絶対顔が真っ赤だ。

見られたくないのに、視線を逸らせそうにない。
永瀬さんが私を見る目が甘くて、胸が痺れて苦しい。


安易に信じるわけない。
永瀬さんみたいな人が、私に本気になるはずないから。


それなのにまた永瀬さんは錯覚させるようなことを言ってくる。


「なぁ、俺にも尽くしてよ。俺だったらいくら尽くされたって受け止めてやるよ。いや、むしろ俺もお前と同じくらい尽くしてやる」


耳を塞ぎたくなるような甘い言葉を、これでもかというほど惜しげもなく言ってくる。
平然と余裕しゃきしゃきに。


悪いけど、どんなに甘い顔で殺し文句を言われたって、信じないんだから。

顔見知りになって日が経っていない人に、居酒屋の騒がしい店内で言われたら余計に。

小さく息を吐き、平常心を取り戻していく。
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