焦れきゅんプロポーズ~エリート同期との社内同棲事情~
エピローグ
七月下旬。
先週までぐずぐず続いた梅雨が明けて、昨日も今日もうだるような暑さに見舞われた。


週末土曜日の夜。
私と勇希は朝から汗だくで力仕事を片付け、シャワーを浴びた後、二人で新品のソファに並んで腰を下ろして、いただきもののワインで乾杯した。


スラッと長い華奢なデザインのワイングラスの淵をカチンと軽く合わせる。
すっきりした辛口の白ワインはとても喉越しがいい。
お互いに一口飲んで顔を見合わせて、思わずクスッと笑った。


「さ、食べよ」


勇希が明るい声でそう言って、早速テーブルからフォークを手に取った。


テーブルの上に並んでいるのは、勇希の仕事のリサーチの意味合いもある、デパ地下高級デリカの彩りのいい洋風惣菜だ。
百グラムいくらか知ってるからこそ、その量を見るとこれから先がちょっと心配になる。


「勇希……これ全部でいくらしたの?」


赤ピーマンの入ったキノコのマリネをお皿に取る勇希を、私は横からジトッと見つめる。
途端に、勇希の手がピタッと止まった。
やっぱり、相当高いに違いない。


「いや、でもな」


そう言って、勇希が反撃してくる。


「お祝いだし。本当はちゃんと三ツ星レストランとかで乾杯したかったんだぞ! でも智美が家がいいって言うから、これでも十分安上がりだよ」

「『お祝い』は明日だけで十分です。……もうっ! これから先は、そんなにほいほい買って来ちゃダメだからね!? ただでさえ、出費がかさんでるんだから……」
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