焦れきゅんプロポーズ~エリート同期との社内同棲事情~
嬉しいけれど、こんな贅沢が続いたらうちの家計は火の車だ。
そう思うからこそ、ここはちゃんと引き締めておかないと。


「でも、今日と明日はいいだろ。……本当に、人生で最大の『お祝い』なんだから」


勇希がマリネを口に運びながら、少し背を屈めた姿勢から私を振り返る。
私はグラスをテーブルに置いて肩を竦めた。


「今日は引っ越し蕎麦が正解だったんじゃないの?」


そう言いながら、私もフォークを手に取る。
勇希がつまらなそうに唇を尖らせた。


「あのな。セコいこと言うなよ。前夜祭だぞ!? ……お互い独身最後の夜くらい、一緒に祝おうや」


そんな勇希の言葉が私の胸にも沁みるから、何度か小さく頷いてから、私もお惣菜にフォークを伸ばした。


今日、私たちは『夫婦』として暮らす新居に引っ越しを済ませた。
今までよりも広い2LDKの間取りに、オフィスまでメトロで二十分の好立地。
変わらない環境と、これからの生活を考えて選んだ新居だ。


日の高い午後、必死になって荷解きしたおかげで、まだ少し荷物が残っているけれど、もうすっかり新しい生活を始める準備は整っている。


そして明日……。朝から二人で区役所に行って、婚姻届を提出する予定だ。
昨日までと変わらず一緒にいるけれど、今夜が『独身最後』だと思うと、確かにとても特別な気がしてくる。
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