焦れきゅんプロポーズ~エリート同期との社内同棲事情~
そんな私の頬に、勇希がスッと手を伸ばした。


「そこに智美の愛があるってわかってれば。俺は別にグルメな男じゃないし、……本当に、それでいいんだよ」


そう言って、目を細める。


「あ……」


最後の喧嘩を嫌でも思い出す。
なんともくだらない喧嘩だったけど、あそこで別れを考えたのは間違ってなかった。
勇希の心だけじゃなく、私の心にも気付くことが出来た。
だからこそ今こうして、七年目の明日を最高の気分で迎えることが出来る。


「……愛のあるカレーを作ります」


私がそう呟くと、勇希はクスッと笑って、『うん』と頷いた。


「具材を変えて、たまにはシチューにするとか、工夫もします」


私の真剣な言葉に、勇希が吹き出して笑った。


「そうそう。それ、ありがたい。……あ~、久しぶりに智美のカレー食べたくなった。明日とか」


そう言いながら肩を揺する勇希に、私までつられて笑ってしまう。


「明日はダメ。勇希、レストラン予約してくれたんでしょ?」

「でも。智美の手料理の方が、最高だから」


本気かどうかわからないことをとても真剣に言い放って、勇希が私の肩に手を回してくる。
綺麗な顎を傾けて、勇希が私に近付きながら目を細めた。


私も黙って目を閉じる。
彼の唇が触れるのを待つ。
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