焦れきゅんプロポーズ~エリート同期との社内同棲事情~
心の奥底から絞ったようなその声に、さすがに俺も手を止めた。
身体を起こして、俺の下で横たわる智美を見つめる。


「恋人じゃないって。俺はまだ……」

「勇希は……言ってることもやってることも態度も、全部統一性無しで、滅茶苦茶なのよっ!」


智美はそう叫ぶと、俺の隙をついて手の自由を取り戻した。
そして俺の胸を押しのけると、今度こそベッドから降りて逃げようとする。


「っ……、ちょっと待て!」


慌てて腕を伸ばして、智美の腕を掴んだ。
振り払われる前に、ギュッと力を籠める。


「……ごめん」


意味不明に逸る自分を抑えたい一心で、大きく息をした後で静かにそう告げた。
俺の声色に気付いたのか、智美も黙って俯いている。


掴んだ腕をそっと離した。
智美はすぐに腕を引っ込めたけど、それ以上は逃げようとしなかった。


逆に俺の方がベッドから降りた。
しっかり床に足をついて、息を吐きながら低い天井に顔を上げる。


「もうこんなことしないから。……だから、これ以上逃げるなよ」


智美の顔を見れないまま一言だけそう言って、俺は大股で寝室のドアに向かう。
智美の視線を背中に感じたままで、半開きのドアを開けた。
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