焦れきゅんプロポーズ~エリート同期との社内同棲事情~
夜中ずっと思考をユラユラと働かせて、全然熟睡出来なかった。
眠らないより疲れた気分で、アラームが鳴る前に身体を起こす。


ボーッとする。頭が重い。
額を手で押さえながらベッドから降りて、私はそっと寝室のドアを開けた。


音を立てないようにしたつもりなのに、踏み出した足が床をミシッと軋ませてしまう。
その先に転がって寝ていた勇希が、モゾッと身体を起こした。
そして、寝癖のついた茶色い髪をワシワシと掻き回して、なんだか気だるそうに頭を振った。


「……おはよう」


昨日の今日で、さすがにまともに顔を見れない。
私は一言だけ挨拶して、洗面所に向かおうとした。


「……はよ」


返って来た声はなんだか掠れていた。
しかも、通り過ぎざまに小さなくしゃみが聞こえて、私は思わず足を止めた。


「……もしかして、風邪?」


さすがに気になる。
考えてみれば、夏場とは言え、薄い布団だけでリビングで眠らせて、何日経ったか。
私のせいだと自覚があるからこそ、罪悪感が過る。


「いや。大丈夫」


勇希はすぐにそう短く返答した。
だけどやっぱりその声はしゃがれていて、どう見ても身体の調子が良くないのはわかる。


「でも、顔色悪いよ」


一瞬躊躇しながらしゃがみ込んで、勇希の前で膝をつく。
そっと手を伸ばして額に触れると、思った以上に熱かった。
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