焦れきゅんプロポーズ~エリート同期との社内同棲事情~
定時を迎えると同時にパソコンをシャットダウンして、私はオフィスを飛び出した。
相変わらず携帯に勇希からの着信はなく、電話しながらジリジリするよりは急いで帰る方が利口だと判断した。


途中で薬局に飛び込んで、どんな風邪にもよく効くと勧められた薬とスポーツドリンクを買った。
そのまままっすぐマンションに帰ろうとして、お粥にしろうどんにしろ、何か消化のいいものを作ろうと思ったのに、冷蔵庫に材料になるものが何もないことを思い出してしまった。


仕方なくスーパーに寄った。
先週カレーばかり作る羽目になったのも、買い物を横着して、傷みの遅い常備野菜で作れる楽なもの……を考えた結果だったのだから。


今思えば、勇希が苛立ったのも理解出来る。


そうだよね。あんなの、彼女としては最低だった。
自分のしてることを棚に上げて、勇希の無神経さばかりを責めた。
恋人じゃなくなってしまった原因は、私にももちろんあったはずなんだから。


いつからだろう。
どうして恋を失ってしまったんだろう。


答えはすぐそこにあるはずなのに、濃い靄に包まれていて、私にはボーッとした輪郭しか捉えられない。


本格的な夏の到来を感じる夕方の生温い空気が漂う街を、私はヒールを打ち鳴らしながら走り続けた。
駅から徒歩で十分かからないマンションがとても遠く感じるくらい、もどかしくて堪らなかった。
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