焦れきゅんプロポーズ~エリート同期との社内同棲事情~
ドアを開けて、靴を脱ぐのも面倒になるくらい気が急いたまま、私はキッチンに荷物を置くとリビングに飛び込んだ。


途端に、湿気の少ない心地いい空気が私の身体を包み込む。
南向きの大きな窓ガラスから、まだ沈み切っていない夏の夕日のオレンジが射し込んで、電気の点いていないリビングを暖色に彩っている。


足を踏み出した途端、私はギョッとした。
分厚い布団を寝室から持ち出して、それにくるまるようにして勇希が床に転がっていたのだ。


「ゆ、勇希!」


オフィスで散々妄想した嫌な予感が、一瞬目の前でリアルになった気がした。
まさか本当にこんなとこでぶっ倒れているなんて……。
私も仕事を休んで付き添っていれば良かった、と今朝の自分の判断を本気で後悔しかけた。
けれど。


「……ん、智美……?」


布団を身体にグルグルに巻き付けた状態で、勇希がうっすらと目を開けた。
トロンとした瞳で私を確認している。
それにホッとした後、次に湧き上がるのは焦れたような怒りだった。


「な、なんでちゃんとベッドで寝ててくれないのよ!」


そう叫びながら、床に膝をつく。
勇希の身体から布団を剥がしながら、ふとテーブルの上の白い紙袋が目に映った。


近くのクリニックの薬袋だ。
良かった。どうやらちゃんと病院には行ってくれたみたいだ。
< 82 / 114 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop