先生、恋ってなんですか?

「はい、少々お待ちください」

反射的にそう応えて周りを見回すと、スタッフたちはそれぞれ補充に別卓のオーダーにと忙しそうだ。
一番早く動けるのは自分だろう、と、瞬時に判断すると、常連さんに会釈をしてカウンターから出ていく。
もちろん、くるりと周りを見渡してついでにできるホールの仕事のチェックも忘れない。
あそこの席は水がなくなる、アルコールが少ない、お皿でテーブルが狭い、あのお皿は下げれる?
頭のなかで次の動きを計算しながら声のしたお席に向かって進んだ。





もう一度言う。
私は気が緩んでた。

だから、自分が向かったお席が、例の席だということを失念していたのだ。










そしてものの見事に先生に見つかり、その日の夜、仕事帰りに何故かふたりで深夜営業中のファミレスに行くことになったのである。

「なんで先生とふたりで顔を付き合わせてコーヒーを飲んでるんだろう」

目下の、疑問である。



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